NAND制御チップ・NANDストレージソリューションの統合サービス分野での世界的リーダーであるPhison Electronics(ファイソンエレクトロニクス 群聯電子、台湾証券コード:8299)は、2025年COMPUTEX TAIPEI国際展示会に、世界初の6nmプロセスを採用したAIコンピューティングSSDコントローラ・モジュール「E28」を発表し、同展示会で最高栄誉にあたる「Best Choice Award 金賞」を受賞しました。これは業界内外から大きな注目を集める成果となりました。
COMPUTEXの「Best Choice Award」は、主催者の台北市コンピュータ協会による唯一の公式賞であり、産学官の専門家によって、技術革新性、価値、市場への影響力などを基準に厳正な審査が行われます。中でも金賞は、すべての受賞製品の中から最も産業的価値と革新性を兼ね備えたフラッグシップ技術にのみ授与されるものです。今回の受賞は、ファイソンの技術力および市場における革新性が国際的に高く評価されたことを示しています。
近年、生成系AIや大規模言語モデル(LLM)の急速な発展により、GPUや高帯域幅メモリ(HBM)への需要が急増しており、特にエッジAIの分野においては、ハードウェア面でのボトルネックが課題となっています。
ファイソンは2024年に、こうした業界のニーズをいち早く捉え、独自の特許技術「aiDAPTIV+(アイダプティブプラス) Link」を活用した「aiDAPTIV+ 1.0」技術を開発。学習したデータを段階的に「aiDAPTIVCache(製品名:AI100)」へと格納することで、限られたハードウェア資源でも大規模モデルを効率よく動作させる仕組みを実現し、従来のAI運用における計算性能の制約を打破しました。
2025年には、更なる研究開発を経て「aiDAPTIV+ 2.0」技術を発表し、今回の受賞対象である「E28コンピューティングSSD」との統合を果たしました。これにより、これまで単なるデータ保存用途であったSSDが、演算処理を担う「コンピュテーショナル・ストレージ」へと進化。システム全体のAI計算性能を大幅に引き上げることに成功しました。
たとえば、NVIDIA製RTX 4090 GPUを4枚搭載したAIトレーニング用ワークステーションにおいて、大規模言語モデル「Llama 2-70B」を訓練する際の性能を比較すると、aiDAPTIV+ 1.0を使用した場合の処理速度は519トークン/秒でしたが、aiDAPTIV+ 2.0とE28を併用した構成では、処理速度が971トークン/秒にまで向上し、約187%の性能改善を実現しています。これは、ファイソンの継続的な技術革新の成果を象徴するものです。
ファイソンの社内評価によれば、E28ソリューションを活用したAIモデルのファインチューニングにおいては、約90%のトレーニングコスト削減が見込まれており、経済性と実現可能性の両面において優れた成果が期待されています。これにより、企業のAI導入、特にエッジ環境へのAI展開における費用対効果を飛躍的に高め、多様なAIエコシステムにおける柔軟な運用が可能になります。
ファイソンのCEOである潘健成氏は、次のように述べています。
「このたびのBest Choice金賞受賞を、大変光栄に思います。この受賞は、長年にわたりファイソンがNAND制御チップおよびストレージモジュールの統合開発に取り組んできた努力が高く評価された結果です。今回開発したAI処理機能を搭載した世界初のSSDソリューションは、ストレージとAI演算の境界を再定義し、データセンターからエッジデバイスへのAIの展開を現実のものとし、真の『AIの民主化』(誰もが使えるAIの実現を)推進する鍵となるものです。」
今後もファイソンは、AIとNANDストレージの融合技術の研究開発に注力し、同社が世界でリードするNAND制御チップの技術力を基盤に、次世代のAIインフラを支える重要なプレイヤーとして、グローバルなAI時代を牽引していくことを目指します。